はれたから

朝のラッシュがキライで
渋滞の道をくぐり抜ける
ようにして会社にかよう
毎日毎日おなじこと
くりかえすようにして
なにも考えないように
失敗だけしないように
重くしめった空気
地下道をかけぬける
学生時代とかわらない道のり
僕がいない中央線
ぎゅうぎゅうづめのひとりぼっち
ひたいをつけた手あかだらけのてすり
僕のからだをすこしだけ
冷たくしてくれる
「きみはひとりでも
 いきてゆけるから」
なんてありきたりな言葉
何度も何度もかみしめては
煮詰まったコーヒーに
ミルク落としてすする
そっと




いようなしあわせ
いまさらかき集めて
ジグソーパズル編むように
もうなにもなくていい
だれもいなくてもいいと
書類でうもれながら願う
音のない箱のなかで
キーボードの音だけたたきつけて
はれたからきょうは家まであるいてかえろう
きみのいない家まで