朝のラッシュがキライで
渋滞の道をくぐり抜ける
ようにして会社にかよう
毎日毎日おなじこと
くりかえすようにして
なにも考えないように
失敗だけしないように
重くしめった空気
地下道をかけぬける
学生時代とかわらない道のり
僕がいない中央線
ぎゅうぎゅうづめのひとりぼっち
ひたいをつけた手あかだらけのてすり
僕のからだをすこしだけ
冷たくしてくれる
「きみはひとりでも
いきてゆけるから」
なんてありきたりな言葉
何度も何度もかみしめては
煮詰まったコーヒーに
ミルク落としてすする
そっと
あ
っ
て
な
いようなしあわせ
いまさらかき集めて
ジグソーパズル編むように
もうなにもなくていい
だれもいなくてもいいと
書類でうもれながら願う
音のない箱のなかで
キーボードの音だけたたきつけて
はれたからきょうは家まであるいてかえろう
きみのいない家まで
26
1997.9