ただそれだけの


駅までの道はいつも二人で黙って歩くだけだ。

距離だって少しあいてる。次の日の約束は一度もしたことはない。

毎朝、駅で見かけると慣れない笑顔を作って、互いが互いを気にしながら、だけどなにごともなく一日を過ごす。

本当は好きなのに、言ってしまうとダメになりそうで、偶然ふれた手の甲を、まるで宝物を大切にするようにそっとなでるのだ。いつ終わってもいいように。