1996年5月アーカイブ

1996年5月 7日

失恋は、つかれる。

とりあえず、部屋にある君のものは全部捨てよう
スーパーからもらってきた段ボール箱にぜんぶつめて
分別はきちんとして、燃えるものは半透明の袋に入れて
燃えないゴミと煮えきらない気持ちは
部屋のすみにしまっておこう

掃除機なんて自分でかけたのはずいぶんと久しぶり
こんなにきれいになるもんだと感心した
君にとられた白い綿シャツと
君が嫌いといったチェックのシャツを
まとめて洗濯機に放りこんだら
37分だけお茶にしよう

君のわがままにはずいぶんと振り回されたけれど
これからはもう悩まされることもない
泳げないくせにプールに行くこともなくなったし
興味がないくせにロックを聴くこともなくなった

こんなにひとりって気が楽だったっけ
ホントのことはよくわからないけど
洗濯と掃除の分だけ自分が元に戻っていく気がする
コーヒーカップ持って、ため息一つ
失恋はつかれる

この際だから、部屋のぞうきん掛けをしよう
君の手あかなんかぜんぶふき取ってしまおう
今ごろ君は海辺をドライブ?
そんなことをふっと思ったりして
これが終わったら、ゲームセンターへ行こう
有り金はたいて格闘ゲームをしよう
女の子キャラクターを全滅させたら
きっと僕は大丈夫でいられる

泣いたりしないかな
笑っていられるかな
僕はいつからか ひとりが嫌いになっていたのかも
なんでなんだろう どうしてなんだろう
「ひとりでも平気だよ」って最後の言葉が
嘘になってしまうようで

洗濯物を干し終わったら
いちばんだらしないカッコをして買い物に出よう
何カ月ぶりかでレトルト食品を買おう
自堕落な生活も たまにはいいかな

僕の横に誰もいないなんて、
想像したこともなかったけど
たった今からそういう生活
買い物カゴの重さに辟易しながら、ため息一つ
失恋はつかれる

電話線を外してしばらくおとなしくしていよう
みんな心配しているらしいけど
僕は僕なりにちゃんとやってる
君の作ったごはんがなつかしいけど
自分で何かするのもそれはそれでいいはず
やかんの湯気と、換気扇の音にため息一つ
ほんと、失恋はつかれるな