1996年10月アーカイブ

1996年10月27日

君をむかえに大学の構内まで

一カ月ぶりの君との逢瀬は大学の構内まで
僕は車にガソリンを入れて 洗車して
君に見せちゃいけない ココロの傷は家の玄関に置いてゆく

君に会うまでには 笑顔を充填しておかないと

ココロの栄養補完計画
今日はどこまで何しにいこう?
せっかく晴れたんだ
君の笑顔を探しに あの山越えて

海の向こうには きっとシアワセが待ってる

陸橋を越えたら国道を左へ
信号を右に曲がると二つ目の交差点
君はきてるかな 君は待ってるかな
不安な気持ちは排気ガスと一緒に快晴の空へ

君をむかえに大学の構内まで
僕は元気で暮らしています
時々 君の声を聞きたくなるけど
その時は 大丈夫 ちゃんと電話するから
だから お願い 今日はゆっくりと過ぎていきますように

講堂の裏 駐車場へ向かう
君は 僕を見つけて 大きく手を広げます
僕は 君を見つけて 満面の笑顔です

車をUターンさせるまでちょっと待ってて
「久しぶり」って ちゃんといえるまで
もう少しだけ そこで待ってて

1996年10月13日

デーゲーム3

せっかくだから おべんと食べちゃおうよ
今日の唐揚げなんかいままでで最高のできなんだから
え? 心配で食べる気しない?
やだなぁ もう ゆうじくんたら ひどいよ それ

あたしだって おにぎりと唐揚げくらいなら上手に作れるよ
他の女の子らしいことなんかまるでダメだけど

いまね センター守ってるのがタカハシくん
先週のけんかの原因のひと...そう、あのひとなの
あいつさぁ 昔あたしに彼氏なんか絶対できないっていったんだよ?
だから 今日はゆうじくんのこと自慢してやろうと思って
(むこうのほうが 全然 かっこいいじゃん)
ダメダメ あいつなんか ただの野球バカなんだもん
友達がさ、全然振り向いてくれないって嘆いてたもん

あたし? あたしはねぇ...
あーいう筋肉でもの考えそうなやつってダメなの
なんか一つのことしか考えてなさそうって感じじゃない?
彼女できても大事にしなさそう みたいなさ

心配事とか、不安とかだけになりそうじゃない...なんか
ココロの中とか....うまくいえないけど

ゆうじくんは一緒にいると安心するの
ケンカもするし わがままいいあうけど
あいつなんかよりもずっといいの

(コーヒーでも買ってくるよ)
え? あ そうか
飲み物忘れてきちゃったもんね
あたしのも買ってきてほしいな おんなじやつ
うん 今日はそれがいいの

ほーんと、いい天気だなぁ

あーーーーーーーーっ!!
....ホームランだぁ....
すっごーーーーーーーい

あ〜あ あんなににやけちゃって もう
さっきまでムッとしてたくせに 何よ
あたしはあの笑顔にだまされたんだ きっと

くやしいけれど ホントのことだったんだもん

でもね 今日はタカハシを困らせに来たの
あたしを選ばなかったこと 後悔させてやるの
相手が加奈ちゃんじゃしかたないけど
でも でも。
(試合、どうだった?)
あ、おかえり 勝ったよ ラクショーだったみたい
いま来ると思うよ タカハシくん
あ、手、ふっちゃお

だからゆうじくん しっかり手をつないでいてね

1996年10月10日

デーゲーム2

何も ゆうべ あんな電話かけてくることないのに
「明日 試合 見に行くね」なんてさ
ふざけるのもたいがいにしろよな
なにが「自慢の彼氏紹介してあげる」だか
あんなオンナに振り回されてたんかな、俺

あの時 ふったのはどっちだったっけ
「好きな人ができたら紹介するね」なんて約束
まだ覚えてたなんてさ 律義なやつだよ

気分は最悪 天気は上々 風は背中から吹いてる
これで試合に負けたらシャレにもなんない

おっと 俺の打順じゃん
今日は3打数2安打3打点
鈴鹿台ファイターズのイチローと呼んで
あいつ どうせ試合なんか見てないだろ

初球はスライダー 内角低めの
ここ 苦手なんだよな

ピッチャーを睨みつけて
打球はあいつのところへ
必ず飛ばしてやる
気持ちごと吹っ飛ばしてやる

あ、いった!

1996年10月 6日

デーゲーム

今日はとってもいい天気
君が野球を見にいこうなんて
そんなこといいだすなんて
どういうつもりなんだか

河原敷きのグラウンド
シートを広げて おべんとを広げて
風が気持ちいいね
君はどこを見ているの?

バッターボックス立っているのは
僕の知らない人だった
君が指をさして ニコニコとうれしそうに
そういうことなのかな
コンタクトなんか
はりきって入れてくるんじゃなかった

もしかしてさぁ このお弁当って
僕は食べちゃまずいのかな?
妙に気合の入った感じ
・・・天気がいいなぁ
コーヒーでも買ってくるよ

戻ってくるころにはあの人はあそこにいるのかな
君は僕には見せない表情(かお)をするのかな
なんで僕はついていったのかな
なんで僕についてきてっていうのかな

お人好しもここまで来ると バカだよな

ただいま、試合はどうなったの?
勝ったのか、よかったね
あの人が近づいてくる
君は手を振る 僕は空を見上げる
あの人はにこにこしながらやってくる
ココロの準備はしてきたから大丈夫
たぶん、ね

君は僕を指さしてこういったんだ

「あ、紹介するね。こっちが自慢の彼氏のゆうじくん」