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1997年9月26日

はれたから

朝のラッシュがキライで
渋滞の道をくぐり抜ける
ようにして会社にかよう

毎日毎日おなじこと
くりかえすようにして
なにも考えないように
失敗だけしないように

重くしめった空気
地下道をかけぬける
学生時代とかわらない道のり
僕がいない中央線
ぎゅうぎゅうづめのひとりぼっち

ひたいをつけた手あかだらけのてすり
僕のからだをすこしだけ
冷たくしてくれる

「きみはひとりでも
 いきてゆけるから」

なんてありきたりな言葉
何度も何度もかみしめては
煮詰まったコーヒーに
ミルク落としてすする
そっと





いようなしあわせ

いまさらかき集めて
ジグソーパズル編むように

もうなにもなくていい
だれもいなくてもいいと
書類でうもれながら願う

音のない箱のなかで
キーボードの音だけたたきつけて

はれたからきょうは家まであるいてかえろう

きみのいない家まで

1997年9月25日

咳が、でた。

咳が、でた。
ゆうがた近く
あかりひとつで

咳が、でた。
どのみち心配
などする人もおらず
あまりのはげしさに
いたむ胸と
しぼりだすような涙

熱をだしてしまえば
楽になるのに
そんなことさえままならず
おちそうなタバコを
あわてて消す、住人ひとり
この世の中に

1997年9月11日

days(非可逆連続体。)

永遠に変化し続ける今日。
なにひとつ変わらない自分。
「中学ん時から全然変わんないね」
とは そのむかし
一緒に手をつないで帰ったことのあるもと友人の弁。

部屋を大掃除してて出てきた証明用の写真
いつとったものだかは憶えてないけど
いまも使えそうでなんとなく怖くなる
変わっていくことに憧れて
変わり続ける自分を見ていたくて
大学まで行ったのに
いまじゃこんなていたらく。
早番も遅番も残業しちゃったら帰る時間はみんなおんなじでやんの
「あれえ? まだ残ってらしたんですか?」
とは 入社2年目の女子社員の弁。

「日付が変わって22日、今日の空模様です」
テレビでいってるのに僕たちの会話はいつだってそう
「明日、あいてる?」
深夜12時からつぎの日が始まるっていうのを
意識するのは大みそかの夜たった一晩だけ
明けましたっておめでたくない
いつぞやの偉い人が死んだ日
僕は大失恋をした
ありがたいコトに(ちっともうれしくないコトに)
僕は失恋して何年目というのを年号とともに数えることができる
今年で9年目あの人はもう忘れてしまったかしら
などと感慨にふけることはまずなくて
今日も君からの携帯電話が鳴ることを待ってる
「電車でGO!、二面クリア〜!!」
とは ほんの12時間ほど前の話。君の弁。

永遠に変化し続ける今日。
なにひとつ変わらない自分。
そればかりを気にしてる自分がココにいて
今日も今日とて仕事がたまる。
荷物がどっさり。気分はぐったり。
「そういやぁ、小学生の時もこんなこと考えてたなぁ」
とぼんやり。まだらボケのように仕事場を徘徊。
空中浮遊はできないけど
空間浮遊人間関係浮きまくりは僕の得意技
いつだってそう。いまだってそう。
進歩しない自分が悪いのか、それをよしとする自分が悪いのか。

僕Aというのと僕Bというのが存在して
いつも何かをせめぎ合ってるといえば聞こえがいいのかも知れないが
なんてことはない二律背反アンビバレンス
自己矛盾の葛藤の中で日々をのんべんだらりと過ごしています
いっそみんな死んでしまえばいいのに
と口の中で繰り返すアニメの主人公のように
なんのために生きているんだろうと
自問自答してこの文章を終わりにしようかと決心する
「うまくすれはこれが詩のネタになると思ってやってるんだろ?」
とは僕Cのいけん。降参。

1997年9月 9日

伝わらなかった、言葉、は

書 い 君
い て が
て く こ              僕はもう何もかくことができなくなりました
い れ の
ま る 手              気の利いた言葉も
す こ 紙
  と を              歯の浮くような台詞も
  を 読
  期 ん              ただの一言だって浮かんでこなくなりました
  待 で
  し
  て
           なんてね






      いつかこんな日が来ると思ってた。
      そう 遠くない将来に。

                               き ぼ  き ぼ
                               み く  み く
                               が が  は は
さっきした約束は打ち切られた                 ぼ き  ぼ き
TVドラマの予告のようなもので                く み  く み
最後の言葉が                         を を  で を
さわやかであるならあるほど                  き き  し し
後に残る感情は                        ら ら  あ あ
                               い い  わ わ
                               に に  せ せ
                               な な  に に
                               れ れ  は は
                               れ れ  な で
感情は 尾を 引く モノですか                ば ば  れ き
                               よ よ  な な
                               か か  か か
                               っ っ  っ っ
                       ?       た た  た た


            のに
            そう
            思うだけで

                     「そんなこと、あたしに聞かないで」
                     「だって、誰が答えてくれるんだい?」



    あ な い や 哀 そ
    ふ か ま り し う
    れ っ ま き く 思
    て た で れ な う
    き ほ 流 な っ だ
    ま ど し く て け
    す の た な   で
      涙 こ っ
      が と て
        も




                      「どうかしたの?

                              なに 笑ってるの?

                         どうして 泣いてるの?」




「ヒトのからだの大部分って

 水分だったんだなぁ



                               .........って、さ」






                    遊
                    園
                    地
                    に
                    い
                    け
                    な
                    く
                    て
                    ゴ
                    メ
                    ン
                    ね
                     。







とにかく君をここから離したかった
とりあえず僕を恨んでほしかった
できることなら僕を嫌いになってくれればよかった
かなうことならば
     このふぁいるは
          よんでほしくなんか
                 なかったのです






      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃●〜*   システムエラーが起きました。      ┃
      ┃     不当な命令です。            ┃
      ┃                         ┃
      ┃                    ┏━━━┓┃
      ┃                    ┃再起動┃┃
      ┃                    ┗━━━┛┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



     「いわれると思ったよ」

     「なんだ、つまんないの」







わかってはいるんだ                           そ
わがままな願いだっていうことも                     う
                                    か
君が 誰かのために生きてゆくことができなかった理由も
                                  ダ も
なにもかも 初めからわかっていたことなのに             メ う
でも その場にいあわせてみると                   に な
なんて僕は無力なんだろう って                   な に
                                  っ も
そればっかり そればかり                      て か
考えて もう                            し も
                                  ま
もうなにもかもダメになりそうで                   っ
もうなにもかもダメになってしまって                 た
                                  の
                                  か
                                   。




読んでいてくれてるよね?
これを、読んでくれたよね?


                                   僕は十分
                             それだけで十分だから
                                 このあたりで
                              すべてのファイルを
そして自らを                     システムごと終了させます








            「それじゃぁ 元気で」









      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃ !   システムを、いま、終了しても      ┃
      ┃     よろしいですか?            ┃
      ┃                         ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

                                   fin.

1997年4月16日

ありがとう

引っ越しの準備をしていたら
机のひきだしの奥から
君にもらった時計が出てきた
電池が切れてたみたいで
秒針は動いてなかったけど
竜頭を逆回しにしながら
君のこと考えてた

もうすぐ結婚するって聞いたけど
どうなったんだろう

電池を入れ換えてつかうには
重さが少し気になるけど
そのうちそんなことも気にならずに
腕にはめていられるように
なるんだろうか

1997年3月28日

補完

アルバムを開けると
そこに笑っているのはひとりめの僕
僕が知らない過去を持つ
僕と同じ 顔をした人

先月 線路に飛び込まなければ
僕が ここにくることはなかったのに
誰かの代わりになんかならなくてもよかったのに

ひとりめの僕は 父さんからも母さんからも
十分すぎるくらいの愛情をもらってたって
少し右あがりの文字でノートに書いてあった
そしてそれがとても負担になっていたことも

ふたりめの僕は 笑うことも逆らうことも
まして自分の夢を持つこともままならず
父さんと母さんの願ってたとおりの人生を
歩いていかなきゃいけない

僕は少しだけ僕を恨むよ
僕は少しだけ僕をうらやむよ

ガラス越しのひとりめの僕は
たくさんのチューブにぶら下がって
まるでこれじゃあやつり人形

がんじがらめの僕と
きっとそんなに変わんないんだろうな

「バックアップデータの復旧の準備ができました」

必要な記憶をひとりめの僕からもらったら
また 無味乾燥な日々が始まる

1997年3月21日

ライナス

そして今日も僕は疲れた体をはうようにして部屋に入る

部屋のすみにくしゃくしゃになった毛布を
自分の肩にかけて床の上 何も映らないテレビを見る

あの日外した電話の線は今日もつながることなく
成り行きで持つことになった携帯電話も結局
一度も使うことなく契約は解除してしまった

君が悪いわけじゃない
僕は異常なんかじゃない

部屋から差し込む月の光で光合成をすることは可能だろうか?

真っ暗なままの部屋の中で
僕が今ここにいることを確認したあと
僕がすべきことはいったい何だろう

目を閉じたが最後 僕がこのまま命を閉じてしまっても
そのことに気がつく人は何人もいないはずで
誰かから受け取るはずのぬくもりは
すりきれた毛布からもらうだけになってしまった

薄れてゆく意識を振りきるように
「逃げちゃだめだ」を反芻して
もう何時間かうつらうつらとしたら

また 仕事に行かなくちゃ

1997年3月11日

終わるときはいつも

あんなにも しっかりと 握っていた 手のひらも
今はもう つなぎ止めておく 力もなくて
少しずつ 少しずつ 離れてゆく ちぎれてゆく

君は 前を むいたまま 歩いてゆく
僕は 何もできずに ただひとり ぼうぜんと

1997年3月 4日

風の強い海岸から

夏を過ぎた海岸は風が強くて少し寒くて
それでもあなたとここに来たうれしさだけで
波打ち際まで走っていけた
スニーカーに染み込んでくる波のことなんか
気にも止めないで あなたとはしゃぐ瞬間だけが
永遠に続けばいいと そうでなくてもせめて
もう5分だけ続いてくれたらいいな
なんて思ったりもした
あたし達 こんなに遠くまで来たんだね

1997年1月 7日

思考、錯誤。

 
 い   ひ
 っ き と          降りるあてもない カンジョウセン
 て み こ
 ほ で と       5周目
 し よ で
 か か い               ぐるぐる
 っ っ い                      ぐるぐる
 た た
   
   っ
   て                  と



枚数が足りないからって              よ ぼ
僕がもらったのは                 く く
色あせかかった感熱紙               わ は
ばかばかしくて コピーする気にもなれない     か こ
                         ら こ
                         な に
                         い い
あと二駅で6周目                 の て
                         で も
         ぐるぐる            す い
                           い
   ぐるぐる                    の
                           か



            流れる景色は たあいもなく
             目の前で はしゃぐ 子供
              たのしそうで 危なそうで

     イマココデ アヤメタラ ドンナニカ タノシイダロウ イマココデ ギャクサツデキタラ ドンナニカ



                                   そ
は               さ                  う
な               っ                  や
し               き                  っ
た  どんなふうに見てる    か                  て
い               ら                  す
こ               そ  どんなふうに見える       ぐ
と               ら                  だ
が               ば                  ま
あ               か                  る
っ               り                  ん
て               み                  だ
も ことばをのみこんで     て
          お     る   (すぐにめをそらしちゃうんだね)
          お
          き
          く
          い                    僕は 誰だ
            き
  僕は        を
  いったい      す          ぼくがなにかしたのかも
  何者なんだい?   い
           こ
          ん            ほんとうのことをお
         で                     し
な                              え  ぼ
ん                              て  く
て    誰かに 粉々に 壊されてしまったほうが        く  は
い                              だ  き
え    まだ よかったのかもしれない             さ  ら
ば                              い  わ
い                                 れ
い                                 て
のかな なんていえばよかったのかな                 る
                                  の
                                  か
                                  な



           宿題 ながめ  読みかけの小説
            ぱらぱらと  もてあそびつつ
               それでも    シセンは
           窓の外を──────




       ───電車はたった今6周目の旅に入りました───




                   も
                   う
                   や
                   だ
                    。



          大声で叫ぶわけにもいかず
             まして誰かに話しかけることも
           ままならない 僕にとっては

                            このまま 未来永劫


           ぐるぐる

                            ぐるぐる


      ぐるぐる           ぐるぐる



                              ぐるぐる

     ぐるぐる
                    ぐるぐる        と