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1998年1月23日

君の手のひらから

いつも冷たい君の手が
今日はやけに熱いのは
ほかの誰かのそばにいたから?

「今日は冷たい手をしてるのね」って
つつみこんで 自分の方にひきよせた
君の顔がやけに 大人びてみえる

君の手のひらから 気持ち冷めてゆく
僕の手のひらから 心 離れてゆく

1998年1月19日

ある日、突然

神様が、僕の目の前に来て、
こう 言ったんだ。

「あ、君ね。
 失敗作だったから
 回収されることになったから」

さて、僕はなんて言えばいいんだろう?

決して彼らのようではなく

ひとの話なんか誰も聞いてはいない
ということに気がついてから
僕は自分から話しかけることはやめようと決心した
「口から産まれてきたような子」と
親にまで揶揄されるような僕にとって
日長一日黙っているのはかなり困難なことのように思えたが
「嫌われ者は黙ってろ」
「おまえの話なんか面白いわけないんだから」
「これ以上誰かに迷惑かけてどうする」
ということを心の中で繰り返しては飲み込んで
あとは本でも読んでいれば
自然と時間が経っていくことがわかってきた
「先生、あのね」とノートにでも書けば
許されるような年齢はとっくに過ぎたし
だんだんと臆病になってくる自分には
人の輪の中に無理やり割って入ることも
なにがしかの罪悪感を伴うようになってきた

     君の方を見ると
     君はすぐにいやな顔
     そんなつもりはないのに
     ただ 君のことを

仕方ないよねと嘲笑(わら)う
人前では泣かないと決めている
これ以上誰かに何かを言われたら
僕ができることは一つだけだということも
わかっているのだ
ただそれだけのことなのに

     せめて君が引導を渡してくれたら
     たぶん僕はすぐにでも
     君にいやな顔をされるよりかは
     どれだけか

授業が始まればまた教師たちは
僕をネタにあの話を始めるのだろう
ほんの少しだけ我慢していれば
ひととおり嘲笑(わら)われて
いやらしい目つきで見られて
たぶんそのくらいで終わるはずだ
そうしてそれだけのために僕はここにいる
感情も口も閉じたまま
ひどく痛む胸を気にしながら

1998年1月10日

コインランドリー

真夜中のコインランドリー
                     は
で                             ひ
ちょうど                          と
金魚                            が
 鉢                            い
 の                            な
  ように                         く
                              て
僕は                            好
 世間から隔離されて                    き
         い
         ます。

乾燥器 5kgまで
ぐるぐる ぐるぐるぐるぐる ぐるぐる ぐるぐるぐるぐる ぐるぐる ぐる
くたびれたTシャツと

   ゴムの伸びきったパンツ

     襟が真っ黒のワイシャツ

 ぐるぐる ぐるぐる ぐぐる ぐるぐる ぐるる ぐるぐるぐる ぐるぐる

 君にもらったネルシャツ


ワークブーツに似合うごっつい靴下
            コーネリアスのTシャツ

       デニムのパンツ
 るぐる ぐ  ぐる ぐるる ぐるぐ ぐぐる ぐるぐる ぐるぐるぐる ぐる
               100円で10分運転します
たとえば
   たとえば

    た とえば。


 ここで今 本当にひとりきりになっても、2~3日は持つ、

 だ
  ろう。


 伊藤園 ダイドードリンコ(ねえ、なんで「ドリン『コ』」なの?)
 コカコーラボトラーズ(なぜか鈴木京香のポスター付き)ときて
 明治乳業、グリコ

     と
     まあ、これだけの自動販売機があるからだ。

  おもわず「♪グリコ」とか口ずさんじゃうのが寂しいけど

 これをぶっ壊していけば大丈夫。
 硬貨だって手に入るしって、ひとりしかいないんだったら
 お金なんか意味ないじゃん
 あれってただの金属の固まりじゃんって
         僕、誰にむかっていってるんだろう?


古ぼけたカラーボックス(980円、かな)には
なぜか「バディ」。
    そういや、この前きたときは
    おとなしそうな見た目の男の子が
    ずーっとこっちを見てたなぁ。
           うん、たしかに。
    で、彼の手には「バディ」。
    そのときは僕、カジくんみたいに半ズボンはいてたから
    もしかして、彼は、ショタコン?
んなわけないか。
でも、ちょっとドキドキした(ウソ)


とまった...と思ったら、
となりの乾燥器(大)だった。
ずいぶんためこんだなぁ、と ひとごとなのに
感心したりして。
なかの物から察するに、きっと学生さん。

      「あ、


          あの。」


            後ろから、声。
            ふり、むく。
            と。
   「そこ、ボクの洗濯物......」

        こりゃまたずいぶんと気弱そうな男の子。
        って、この前の彼じゃん。

   「この前もいましたね。この近くなんですか?」


               「それは秘密です」

   スナドリネコさんよろしく一言だけ。
   そのまま深夜の観察会に突入する。

   彼は頼みもしないのに自分の身の上を話し始めた要約すると高校のと
   きに先輩に襲われてから男にしか興味がわかなくなってでそのときの
   先輩に僕が似ていたらしく一目あったその日から恋の花咲くこともあ
   る見知らぬあなたと見知らぬあなたがパンチでデート(いらっしゃ~
   い←それは違う番組だろ)てなことらしいなにを考えているのだ君は


        「あんた、バカぁ?」


  そうこうしているうちに乾燥器が止まったので、
  洗濯物をとりだしながら
  僕は無理難題をふっかけた

  「ここで裸になってオナニーしたら、そしたらつきあってあげてもいいよ」

  その男の子は見るからに悲しそうな顔をして、洗濯物を抱えて
  ここを出ていった。
  なにか落とし物をして。
  つまみ上げると、パンツ。てぃーばっくってやつですか。
  恥かかされて、パンツまでおとして、可哀相なヤツ。
  でももしこれを持って、探しにいったら、
  非常に間抜けなシンデレラだなぁ、と、世間の夢など
  すっとばかすようなことを思っては

     笑った。

  笑った。
          笑った。

            笑った。

      咳が出た。
        苦しい。

          でもまだ

       笑っているんです僕はこの馬鹿馬鹿しさに呆れるほど!

だからっつって 人の洗濯物持って帰るほど
着るものには困っちゃいないし(←そういうことじゃないだろ)
まして変態でもないので
      「わすれもの」と紙がはってあるカゴに
    ほうりこみ
      丸椅子に腰掛け
          しばし一服。
       (お気に入りはケントマイルドボックス入り)


あ、雪だ。


    こんな隔離された場所にも雪は惜しみなく降るんだなぁ
    なに勝手に隔離されたなんて思ってんだろ
    早くしないと 道 凍るぞ

      と わざと声にだしながら
         僕の唯一の居場所である
           コインランドリーをあとにした。


                 また、今度。