はなれるときはいつもさみしい


一日一緒にいて、それはそれで良くて、このままずっと続けばいいのに、と毎回思う。
だけど明日は必ずやって来るし、それぞれの生活はあるし、自分のものではないし、お互い。

前は切符だったけど、いつの間にかSuicaになって、残額を気にしたりしなかったり、でもまた来るねなんて言って改札を抜けるのは変わりなくて、通ったあとすぐにこっち向いて手を振る。
名残惜しそうにしたのは最初の頃だけで、今は「電車乗り遅れるから早く行きな」って言っちゃったりして、強がってるわけでもないんだけど、でも振り返る回数が減っていくのはなんか嫌だなって思うし、言葉にするのはわがままな気がして言えないでいる。

ホームに向かう姿が少しずつ見えなくなって、階段を上がっていくところが見えて、ああ、行っちゃったって思って、誰が見ているわけでもないのに顔を見られるのが嫌で下向いて改札をあとにする。毎回このままひとりになったらどうしようって思うけど、また明日会うこともわかってる。そのときはもうちょっと他人ぽい顔をしている。誰にも知られたくない顔を、今している。

楽しい時間はいつか絶対に終わる。こうやって時々会うことも、いつか、なくなる。それがどういうことなのかはまだわからなくて、子どもじゃないんだからもう少しどうにかしろよって自分でも思うけど。でも。

重い。重いよなあ。自分の全てを相手に負わせているつもりはないのに、知らないうちにそうなっている。何度も軌道修正をしているのに、だ。こういうの性分じゃない。だいいち気持ちが悪い。この前だってあの人にそう言われたばかりじゃないか。

そんなふうに考えながら駅から離れてひとりで家に帰る。寄り道はいつもしない。面倒くさい思考は途中のゴミ箱に空いたペットボトルと捨てる。そっけない視線をそっけなく返す練習をする。それは気づかれちゃいけないというよりはなにもなかったようにしなくちゃいけない、それだけのことだ。