2002年10月アーカイブ

2002年10月14日

訳も知らないで

すれ違うひとも少ないまま
いつの間にかできていた広い広い通りを
ひとり
夕方の熱が冷めかけた頃に
身体をあおる風
たぶん数年もしないうちに寂れてしまうであろう建物を
スクロール

自動ドアを抜けてエスカレーター
かけ上がるでもなく手すりにもたれ
摩擦の存在を感じ運ばれる
可視光線だけが切り取られた窓をナナメに

紙束の並ぶ空間を一往復 二往復
意味のない言葉ながめ がんじがらめの映像読み解き
他人との距離があいていく
天文学的加速度で むこう端にも姿が確認できません
天の声 有線放送 空耳 幻聴 電波
を受信

ああ、人を殺したいな

思いつくすべての方法についてその正当性を証明せよ
と問い掛ける
天に 有線放送の線の先に 空耳の声に 幻に 電波に乗せて
送信
完了

本棚にタオルを引っかけて座るようにして逝った少年と
親友に切ってもらったロープで逝った彼と
10カウントくりかえし空を飛んだ君と
何もできずにただ漫然と日常をやりすごし
昨日よりも少し痩せた僕を 比べるにはなんだか
僕になにか足りないような気がして

気がして

何年も来ただけじゃないか
そしてここにはもう誰もいなくなってしまったのです
もう誰も

(そう、僕の目の前を通りすぎるウサギも
無理やりな欲望を救ってくれるネコも)

ぐるり一周 二周
新たな人の気配を探し バターになる前にやめなくては
真後ろに立ったなにかに気づき その存在を確認する前に
鳴る指
くにゃり
身体が折れ曲がり立てなくなるのです もう二度と

助けてという言葉も思いだせないままに