« ライナス | ホーム | ありがとう »

1997年3月28日

補完

アルバムを開けると
そこに笑っているのはひとりめの僕
僕が知らない過去を持つ
僕と同じ 顔をした人

先月 線路に飛び込まなければ
僕が ここにくることはなかったのに
誰かの代わりになんかならなくてもよかったのに

ひとりめの僕は 父さんからも母さんからも
十分すぎるくらいの愛情をもらってたって
少し右あがりの文字でノートに書いてあった
そしてそれがとても負担になっていたことも

ふたりめの僕は 笑うことも逆らうことも
まして自分の夢を持つこともままならず
父さんと母さんの願ってたとおりの人生を
歩いていかなきゃいけない

僕は少しだけ僕を恨むよ
僕は少しだけ僕をうらやむよ

ガラス越しのひとりめの僕は
たくさんのチューブにぶら下がって
まるでこれじゃあやつり人形

がんじがらめの僕と
きっとそんなに変わんないんだろうな

「バックアップデータの復旧の準備ができました」

必要な記憶をひとりめの僕からもらったら
また 無味乾燥な日々が始まる