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1998年1月19日

決して彼らのようではなく

ひとの話なんか誰も聞いてはいない
ということに気がついてから
僕は自分から話しかけることはやめようと決心した
「口から産まれてきたような子」と
親にまで揶揄されるような僕にとって
日長一日黙っているのはかなり困難なことのように思えたが
「嫌われ者は黙ってろ」
「おまえの話なんか面白いわけないんだから」
「これ以上誰かに迷惑かけてどうする」
ということを心の中で繰り返しては飲み込んで
あとは本でも読んでいれば
自然と時間が経っていくことがわかってきた
「先生、あのね」とノートにでも書けば
許されるような年齢はとっくに過ぎたし
だんだんと臆病になってくる自分には
人の輪の中に無理やり割って入ることも
なにがしかの罪悪感を伴うようになってきた

     君の方を見ると
     君はすぐにいやな顔
     そんなつもりはないのに
     ただ 君のことを

仕方ないよねと嘲笑(わら)う
人前では泣かないと決めている
これ以上誰かに何かを言われたら
僕ができることは一つだけだということも
わかっているのだ
ただそれだけのことなのに

     せめて君が引導を渡してくれたら
     たぶん僕はすぐにでも
     君にいやな顔をされるよりかは
     どれだけか

授業が始まればまた教師たちは
僕をネタにあの話を始めるのだろう
ほんの少しだけ我慢していれば
ひととおり嘲笑(わら)われて
いやらしい目つきで見られて
たぶんそのくらいで終わるはずだ
そうしてそれだけのために僕はここにいる
感情も口も閉じたまま
ひどく痛む胸を気にしながら